私が勧めた宮古島の住み心地は良いか。
お前と出会ったのは去年の夏、の故郷蒜
山への単独山行での出来事だった。荒い息
とともに登ってゆくと、お前はひらり、ひ
らりと眼前に舞い込んできた。あつ、アサ
ギマダラだ。
お前数メートル先のフジバカマの花枝に
羽を休めた。飯豊連峰あたりから飛び立ち
ゆうに千キロを飛んできたお前は疲れてい
たのだろう、花枝にぶら下がって羽根を折
りたたみ、浅葱の文様のなまめかしさを惜
しげもなく晒していた。尾根の上手に回っ
た私は直下に広がる薄緑の高原の村を背景
にアサギマダラを浮き上がらせてシャッタ
ーを切った。
その時アサギマダラは独りだった。その
後アサギマダラは中国山地の山々を縫うよ
うに飛び、海を越えておそらく宮古島に降
りた。
秋が来て冬も過ぎようとしている。アサ
ギマダラよ、お前は何処にいる。いまだ一
人暮らしなのか。体は癒えたか。私が勧め
た宮古島の海辺の洞窟はどうだ。住み心地
はいいか。
アサギマダラよ、暖かくなったら日本に
帰ってきておくれ。飯豊連峰だけでなく、
わがふる里蒜山高原も良き身過ぎの出来る
居場所になるに違いない。

現代詩ランキング