私の住んでいる町には、ほぼ中央あたりに
巨大な円形の稲田がある。住宅の浸出におか
されつづけながらもいまだに収穫がおこなわ
れているが誰もが気にもせず通り過ぎる。
無残とも思うそっけなさで刈り取られた切
株の連なり、そこから鋭く突き出た青い芽は
そろって天へ天へと伸びている。切り売りす
るように田んぼを贈与してもらった農家の若
い人たちが小道に沿って建てた箱型の大きな
住宅の白壁が陽を受けて輝く。そこには新し
い人が住み、その反対側には瓦の屋根の重い
家に高齢老人の黒い頭が出入りする。
稲田を囲む円形の集落は畦道を広げた軽四
道路が四方に走り、真ん中あたりに交差点
もある。だが、人々は自家にこもることが多
く、老人のウオーキング姿もなぜか少なくな
った。人と人が出会いを避けているのだろう。
畦道に沿って流れる用水には遣い捨てのぼろ
ぼろが浮かんでいる。犬連れの無作法だけが
円形の空間に小声で伝わる。町は空気の途切
れたような閉塞感がただよい不安ばかりがひ
とり歩きしている。
現代詩ランキング
2024年11月16日
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