2024年11月16日

わが町の風景

  私の住んでいる町には、ほぼ中央あたりに
 巨大な円形の稲田がある。住宅の浸出におか
 されつづけながらもいまだに収穫がおこなわ
 れているが誰もが気にもせず通り過ぎる。
  無残とも思うそっけなさで刈り取られた切
 株の連なり、そこから鋭く突き出た青い芽は
 そろって天へ天へと伸びている。切り売りす
 るように田んぼを贈与してもらった農家の若
 い人たちが小道に沿って建てた箱型の大きな  
 住宅の白壁が陽を受けて輝く。そこには新し
 い人が住み、その反対側には瓦の屋根の重い
 家に高齢老人の黒い頭が出入りする。
  稲田を囲む円形の集落は畦道を広げた軽四
 道路が四方に走り、真ん中あたりに交差点
 もある。だが、人々は自家にこもることが多
 く、老人のウオーキング姿もなぜか少なくな
 った。人と人が出会いを避けているのだろう。
  畦道に沿って流れる用水には遣い捨てのぼろ
 ぼろが浮かんでいる。犬連れの無作法だけが
 円形の空間に小声で伝わる。町は空気の途切
 れたような閉塞感がただよい不安ばかりがひ
 とり歩きしている。


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posted by kanda minoru at 15:51| Comment(0) | 現代詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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