また一つなくなった
俺のゆくところも
またひとつ少なくなった
世の流れに遅れて生きて行くと
ろくなことはない
まじめなこころがヒネタこころに
容易に移し変えられ
ヒネタこころは
ヒネタ言葉になって地上に顔を出す
蝉には悪いが
まるで蝉のように簡単に穴から出てくる
夏は蝉が生まれ蝉が死ぬ時だ
海の上なら肉体の始末もやりやすいだろう
アサギマダラよ
お前はいい時に海を渡る
孤独はきついが
老人が死の淵に立つより
やさしいだろう
老人は故郷への扉を固く閉じられ
帰ろうに帰れないのだよ

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